被写界深度の計算式
まず過焦点距離を求め、そこから近点と遠点を出します。記号は f が焦点距離、N がF値、c が許容錯乱円、s が被写体距離です。
近点 Dn = s(H − f) ÷ (H + s − 2f)
遠点 Df = s(H − f) ÷ (H − s)
被写界深度 = Df − Dn
遠点の式は分母が H − s なので、被写体距離が過焦点距離に達すると分母がゼロになり、遠点は無限遠になります。つまり過焦点距離より遠くにピントを置けば、そこから先はすべてピント内に入るということです。
許容錯乱円の値
| センサー | 許容錯乱円 |
|---|---|
| フルサイズ(35mm判) | 0.030 mm |
| APS-C | 0.020 mm |
| マイクロフォーサーズ | 0.015 mm |
| 1インチ | 0.011 mm |
点光源がどこまでぼけたら「点ではない」と見えるかの限界値です。センサーが小さいほど大きく引き伸ばすことになるため、値も小さく設定されます。
深度をコントロールする4つの要素
- 絞る:F値を上げると深くなる。ただしF11を超えると回折で解像が落ちる
- 離れる:被写体距離が2倍になると深度はおよそ4倍になる。最も効果が大きい
- 広角にする:焦点距離が短いほど深くなる
- センサーを小さくする:同じ画角・同じF値なら、小さいセンサーのほうが深い
深度が足りないときに絞りだけで解決しようとすると、シャッター速度かISOのどちらかを犠牲にすることになります。まず撮影距離を見直すほうが画質の面で有利です。
実例:ポートレートの深度を数字で見る
フルサイズ・50mm・F2.8で、2m先の人物にピントを合わせた場合を式のとおり計算します。
近点 ≒ 1.88 m 遠点 ≒ 2.14 m
被写界深度 ≒ 0.26 m(前後26cm)
前に12cm、後ろに14cm。両目と鼻先は収まりますが、体を斜めにした肩や、半歩後ろの人物はもうぼけ始める深さです。二人並びを両方シャープに撮りたいならF5.6前後まで絞るか、1歩下がって撮影距離を伸ばすかになります。
逆に同じ設定で被写体が1mまで近づくと、深度は6cm程度まで浅くなります。距離が半分になると深度はおよそ4分の1、という距離の効き方を覚えておくと、現場で計算しなくても見当がつくようになります。
過焦点距離の使い方
風景で手前から奥まで写したいとき、無限遠にピントを合わせるのは実は損です。無限遠より手前にある過焦点距離にピントを置けば、その半分の距離から無限遠までが深度に入り、手前側の範囲が広がります。
たとえばフルサイズの24mm・F8なら過焦点距離はおよそ2.4mです。ここにピントを合わせると、1.2mから無限遠までがピント内に入ります。上の計算結果に過焦点距離を表示しているので、現場ではその距離のものにピントを合わせてください。
よくある質問
過焦点距離とは何ですか?
そこにピントを合わせると、その半分の距離から無限遠までがピントの合う範囲に入る距離のことです。風景写真で手前から奥まで写したいときに使います。この距離にピントを置くのが、被写界深度を最大限に使う設定になります。
同じF値でもセンサーサイズで結果が変わるのはなぜですか?
許容錯乱円の大きさが変わるためです。許容錯乱円とは、点が点として見える限界のぼけの大きさで、センサーが小さいほど引き伸ばし率が上がるぶん小さく設定されます。このツールではフルサイズ0.030mm、APS-C 0.020mm、マイクロフォーサーズ0.015mmを使っています。
絞りを絞れば絞るほど画質は良くなりますか?
なりません。F11やF16まで絞ると回折の影響で解像感が落ちはじめます。被写界深度は深くなりますが、画面全体がわずかに甘くなるという交換条件です。多くのレンズではF5.6からF8あたりが解像のピークになるため、深度が足りない場合は絞るよりも撮影距離を見直すほうが有効なことがあります。
ピントの合う範囲は「前1:後ろ2」と聞きましたが本当ですか?
常には成り立ちません。配分は撮影距離で変わります。接写に近い距離では前後ほぼ1:1で、距離が伸びるほど後ろ側の割合が増え、過焦点距離に達すると後ろは無限遠まで伸びます。「前1:後ろ2」が当てはまるのは中間的な距離の一部だけです。このツールは近点と遠点を別々に表示するので、実際の配分は計算結果で確認してください。