ボルト締め付けトルクの計算機

呼び径と強度区分から適正な締め付けトルクを計算します。潤滑の有無や、トルクから軸力を逆算する計算にも対応しています。

締め付けトルク

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※ 目安の値です。設計図や機器のマニュアルに指定がある場合は必ずそちらを優先してください。トルク法による軸力のばらつきは±30%程度に及びます。

締め付けトルクの計算式

ねじを締める力(軸力)を出してから、それを生むのに必要なトルクを求めます。

軸力 F = 有効断面積 × 降伏点 × 締付率
締め付けトルク T = トルク係数 K × 呼び径 d × 軸力 F
降伏点 = 強度区分の 前の数字×100 × 後の数字÷10

強度区分8.8なら、引張強さ800MPa、降伏点はその80パーセントで640MPaという読み方です。10.9なら1000MPaの90パーセントで900MPa。数字がそのまま材料の性質を表しています。

強度区分と材料の性質

強度区分引張強さ / 降伏点
4.8400 / 320 MPa
6.8600 / 480 MPa
8.8800 / 640 MPa
10.91,000 / 900 MPa
12.91,200 / 1,080 MPa

ステンレスのA2-70は引張強さ700MPa、降伏点450MPa前後です。強度区分の表記とは体系が違うので、混同しないよう注意してください。

ねじの有効断面積

呼び径ピッチ / 有効断面積
M40.7 / 8.78 mm²
M50.8 / 14.2 mm²
M61.0 / 20.1 mm²
M81.25 / 36.6 mm²
M101.5 / 58.0 mm²
M121.75 / 84.3 mm²
M162.0 / 157 mm²
M202.5 / 245 mm²

有効断面積は、ねじ山の谷径と有効径の中間で計算される断面です。ボルトが引っ張られたときに実際に力を受け持つ面積で、呼び径の断面積より小さくなります。

トルク係数がすべてを左右する

この計算で最も不確かなのがトルク係数です。摩擦の大きさを表す値で、締め付けの条件によって大きく変わります。

状態トルク係数の目安
黒皮・潤滑なし0.20 前後
亜鉛めっき0.20 前後
油を塗った状態0.15 前後
二硫化モリブデン0.10 前後

同じトルクで締めても、油を塗ったボルトは潤滑なしより3割以上大きい軸力が出ます。逆に言えば、潤滑なしを前提にしたトルク値で油を塗ったボルトを締めると、締めすぎて降伏させる可能性があります。

トルク管理の限界

トルクレンチで管理していれば軸力も正確、というのは誤解です。かけたトルクのうち、実際に軸力になるのは1割程度しかありません。残りはねじ面と座面の摩擦で消えます。

つまり摩擦のばらつきが、そのまま軸力のばらつきになります。トルク法での軸力の誤差はプラスマイナス30パーセント程度というのが一般的な認識です。

軸力を厳密に管理する必要がある場面では、一定トルクまで締めてから決められた角度だけ回す回転角法や、超音波で軸力を直接測る方法が使われます。上の計算結果はあくまで出発点として扱ってください。

実例:M10・強度区分8.8を計算する

最もよく使われる組み合わせのひとつ、M10並目・強度区分8.8・潤滑なし(トルク係数0.2)・締付率70%で式を追ってみます。

軸力 F = 58.0 mm² × 640 MPa × 0.7 = 26.0 kN
トルク T = 0.2 × 0.010 m × 26000 N = 52 N·m

ここで潤滑の怖さも数字で確かめられます。同じ52N·mのまま、油を塗ってトルク係数が0.15に下がったとすると、軸力は52÷(0.15×0.010)で34.7kNまで跳ね上がります。このボルトの降伏軸力は58.0×640で約37.1kN。つまり降伏の9割を超えるところまで締まってしまう計算です。

トルク値だけを覚えて条件の違うボルトに流用してはいけない理由が、この2つの数字の差です。締める前に、めっきと潤滑の状態がトルク値の前提と合っているかを確認してください。

同じ52N·mで締めたときの軸力を、トルク係数0.20・0.15・0.10で比べ、降伏軸力37.1kNの線を引いた図 潤滑なし 0.20 26.0 kN 油 0.15 34.7 kN MoS₂ 0.10 52.0 kN 降伏 37.1 kN
上の実例(M10・強度区分8.8・52 N·m)。軸力 = トルク ÷ (トルク係数 × 呼び径)。同じトルクでも摩擦が小さいほど軸力が大きくなり、0.15で降伏の約9割、0.10(MoS₂=二硫化モリブデン)では計算上、降伏軸力を超える。

よくある質問

同じボルトなのに資料によって締め付けトルクが違うのはなぜですか?

トルク係数と締付率の前提が資料ごとに違うためです。トルク係数は摩擦の大きさを表す値で、潤滑なしなら0.2前後、潤滑ありなら0.15前後を使います。締付率は降伏点に対してどこまで締めるかの割合で、一般には70パーセントです。この2つが変われば結果も変わるため、表の数値を使うときはどの前提で作られたものかを確認してください。

トルクレンチで管理すれば軸力は正確に出ますか?

正確とは言えません。トルク法では、かけたトルクの大部分がねじ面と座面の摩擦で消費され、実際に軸力になるのは1割程度です。摩擦のばらつきがそのまま軸力のばらつきになり、誤差はプラスマイナス30パーセント程度に及びます。軸力を厳密に管理したい場合は、回転角法や軸力計を使う方法が選ばれます。

強度区分10.9や12.9のボルトを使えば安心ですか?

用途によっては逆にリスクになります。高強度のボルトほど水素脆性による遅れ破壊を起こしやすく、締結してしばらく経ってから突然折れることがあります。特に亜鉛めっき品や腐食環境では注意が必要です。強度区分が上がるほど締め付けの管理もシビアになるため、必要な軸力が確保できるなら8.8で足りる場面は多くあります。

メーカーの指定トルクがある場合はどちらを使いますか?

必ず指定トルクを優先してください。自動車のホイールナットやエンジン部品、機械の取扱説明書にあるトルク値は、座面の形状・めっき・潤滑条件・相手材まで含めて決められた値です。この計算機が出すのは、そうした指定がない一般のボルトを締めるときの理論値であって、指定値を上書きするものではありません。指定トルクの根拠になっている条件(ねじ部に油を塗るかどうかなど)が書かれていれば、それにも従ってください。

出典

このページの数値は、次の資料と照合しています(確認日 2026年10月2日)。

公開日 / 最終更新